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2,200トンの巨大エンジン製造

三井E&Sマシナリー 玉野機械工場 製造部
 組立課(ディーゼル)「通称:デ組」 河合敏昭 さん

「デ組」の挑戦。

2200トンにもおよぶ巨大エンジンの組立効率化は、
いかにして成し遂げられるのか。

〝「デ組」の挑戦。

2,200トンの巨大エンジン製造

かつて経験のない巨大エンジンを組み立てるために

長さ23m×幅10.5m×高さ16m、直径95㎝のシリンダー11本が並ぶ巨岩のような大型船舶用ディーゼルエンジン「11G95ME-C(以下95)」 。三井E&Sマシナリーがすでに製造実績を積み上げてきた『11S90ME-C(以下90)』よりもさらに一回り大きなこのエンジンは、組立計画段階から既存の工場設備での対応は難航が予想された。

「エンジンサイズが大きくなれば当然、足場の高さも変えなければならない。治具も大きく重くなる。『90』では問題にならなかった作業法も『95』では安全に行えないかもしれない……」(河合敏昭:以下同)

設計部との綿密な打ち合わせを何度も重ね、『90』との相違点を一つひとつあぶり出して計画された『95』の組立作業。巨大であるとともに、総重量は2,200トンにもおよぶ。作業工程は部品製造→組み上げ→陸上試運転→出荷と進んでいくが、出荷のための輸送にはクレーンの能力の問題から、5つのユニットに分割し、そして納品先で再度組み上げるという、大きさ重さゆえの複雑な工程が伴う。

「5つにバラすにしても、積み上げた高さは『90』を大きく上回ります。天井クレーンの2基をつなぐ相吊りビームも、より高く吊り上げ、バラすために新たなものに作り直さなければならないほどでした」

1台、また1台と積み重ねる経験を改善につなげる

いざ始まった初号機の組立では、いかにスムーズに作業をこなしていくか──を徹底して考えた。

「どんなに計画を練ったとしても、実際の現場作業をしていけば、もっとこうすべきだという改善点を見つけることができます。初号機組立では、作業チームのたまり場に思いついたことや感じたことをみんなが書き留められるボードを設置して、時にはその場で設計部に電話して協議するなど、細かな部分まで徹底して改善点を洗い出していきました」

こうした取り組みの背景には、組織目標として掲げる工数削減を達成するために、納期に追われ焦りを感じつつ、汗だくになりながら力任せに作業してきた風潮の中で、目標達成のために他のことが犠牲になっているのではないか?という「デ組」の苦悩と学びがあった。

「私自身、そういう考えを持っていました。でも、人の動きでカバーできることには限界があります。人の負担を高めることは本来の目的じゃないし、それで得られる結果には必ず無理が生じる。少しだけ高い場所での作業をするのに背伸びして済ませることは簡単ですけど、危険度が高まっては本末転倒。工数削減は大切ですが、それは全てじゃない。遠回りの作業になっても〝足場を組む〟という選択をすべきだし、その方法も作業者が面倒臭がって使わないようなものでは意味がない。安全で、効率的で、作業しやすく、シンプルで使いやすい。そのどれもが含まれとかんといけんのです」

経験を改善につなげる

長さ23m×幅105m×高さ16m、重さ2,200トンという巨岩のようなエンジン。すでに製造実績を持つ『11S90ME-C』よりもさらに一回り大きく、製造計画段階から既存工場設備での対応は難航が予想された。

やりたいことは、まだまだ山ほどある!

河合が指揮を執る第1運転台のチームメンバーは14名。若い部下たちに「なぜその方法にすべきなのか」の理解を促したり、逆に彼らの声を集めることも重要だ。

「できる限り声をかけて、楽しい雰囲気の中でコミュニケーションできる環境をつくるよう心がけています。飲み会もお互いを知るための大切な機会です」

〝日々改善〟を自らへのプレッシャーとする河合。と同時に、それがやりがいだとも語る。

「変えたけど、やらんほうが良かったってこともあります。でも、本質を変えたいと思うんです。新しいことを考えて、それがうまくいって、工場内で水平展開してもらえたりしたら、『あ、真似しとる』とか言いますが、そりゃあやっぱりうれしいですよ」

確かな製品を造り上げるだけでなく、その工程をいかに改善していくか。河合の頭の中には「やりたいことは、まだまだ山ほどある」。

初号機がうまくいったからといって、それで満足することはない。2号機、3号機とさらなる改善を目指して、「デ組」の挑戦は続く。

やりたいことは、まだまだ山ほどある!
やりたいことは、まだまだ山ほどある!

※記事の内容は取材当時(2018年4月)のものです。
※敬称略

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